地域
遥か昔、私の曾祖父Peterは、オーストリア・ハンガリー帝国を「祖国」と呼び、その息子、祖父Leopoldは、イタリアを「祖国」と呼びました。父Ivan は、ユーゴスラビアを「祖国」と呼んで育ちました。 そして、私にとっての祖国はスロベニアです。家族はいろいろな国籍に由来する名前を持ってい ますが、皆、この同じ屋根の下、先祖が建てた16世紀以来続く、Batič屋敷に生まれたのです。 スロベニアの国土は、いくつかの国家に統治され、 変遷の運命を辿りましたが、Batičの家系は、ワインへの深い愛情と強い絆で結ばれ、絶えることなく代々続いてきたのです。 この本は、単にBatič家の物語ではなく、何世代にも亘ってワインへの愛とワイン造りに人生を捧げ続けてきたVipava Valleyの数えきれないほ ど多くの家族の物語でもあるのです。 Vipava地方の暦には、多くの公式の祝日があります。しかし、Vipavaの人々にとって最も重要な祝日は、この暦には記されていません。 それ は、St. Martin’s day(11月11日)を祝う一週間です。 St. Martinは、most ―「モスト」と呼ばれるブドウを絞った濃厚な果汁―を発酵させてワ インを造った聖人です。この祝日は、公式の祝日ではありませんが、ブドウとワインを愛するVipavaの人々にとって、感謝と敬愛を捧げ心から祝う べき日なのです。 スロベニアの国家体制は、世代が移り変わる中、何度も変わりましたが、スロベニアの人々の心は変わらずに、最良のワインを造り出すことに全身 全霊を捧げてきています。