家族

   Batičワインに最も貢献したのは誰かと人に問われたら、祖母のAlojzijaです、と私は答えるでしょう。 祖母は、ブドウ畑へ出ることもなく、ワイン造りにも関わりませんでした。ワインを飲むことさえ稀でした。しかし、祖母は家族にとって大きな存在 で、Batič家への貢献はとても深いものだったのです。家族一人一人に注がれた祖母の無私の愛と温かさは、それぞれの心に、一生懸命働こうとい う気持ちを培いました。 幼いころの私の目には、晩年の祖母の姿は、晩秋の風で吹き飛ばされようとする一枚の樹上の枯葉のように、今にも消えてしまいそうに見えました。 そんな祖母が私はとても心配で、毎朝起きるとすぐに祖母に具合を尋ねたものです。 祖母からは、「今朝は昨日よりずっと気分がいいような気がす るわ」と、毎日、同じ言葉が返ってきました。 この答えを聞く度に、私は嬉しくなり、安堵の気持ちが広がって、その日一日、何の心配もせずに楽しく過 ごせたのです。 私の幼い心にも、祖母の言葉は、厳しい冬を乗り越えてきっと元気になるに違いないという希望を吹き込んでくれたのです。 逃れよ うのない祖母の最期の日が訪れるまで、私はそう信じ続けていました。 祖母は、高等教育を受ける機会には恵まれませんでした。 祖母の生い立ちについてはすでに触れましたが、生まれ育った家庭は貧しく、そのために Goriziaの修道女たちから学ぶことしかできませんでした。 しかし祖母は、想い出とともに、多くの尊い教えを残してくれました。 「私達の苦労は私達自身のもの。決して、ほかの人の重荷になるようなことがあってはいけないのよ」という言葉もその一つです。 自分の責任におい て何らかの決断を迫られるとき、私はこの祖母の言葉を思い出すのです。