セラーリング
ごく小さな苗木から、ブドウは自ら育ちます。 その奇蹟の営み
Miha Batič
を、人間が妨げる必要があるでしょうか?
第二次世界大戦の終結後、ワインの蔵元は、その生産量に応じた税を課せられました。 蔵元の家族一人あたり1gholberほどのワインを残すこと だけは認められましたが、残りはすべて課税対象と見做されました。 戦後の人々の生活は大変苦しく、多くの蔵元にとって、この課税は厳しい現実でした。人々は知恵を絞ってこの困難な状況を乗り切ろうとしまし た。 Batič家の状況も同様でした。そのために、いくつかのワイン樽を干し草で覆って農園に隠すことにしたのです。 Batič家が翌5月に農園の樽を開けてみると、驚いたことに、どの樽のワインも期待を上回る素晴らしい品質でした。 おそらく、しばらく樽を隠しワイ ンに触れなかったことが、想像以上の高品質のワインの誕生に幸いしたのだろうと考えられました。この出来事をきっかけに、その後、Batič家は、 貯蔵庫の管理方法を見直しました。ワイン課税がなくなった今でも、我が家では極力ワイン貯蔵庫には入らないようにしています。 ワイン樽から 直接試飲することも、Batič家では絶対に行いません。 ワインの醸造法を選ぶことは、ワインの貯蔵法を選ぶことに行き着きます。両者は鏡に映る姿のように、ワインの蔵元の姿勢を写し出します。 ブドウ畑が生命で満ち溢れていれば、ブドウが育つ過程で、自ずとその実の中に、ワインの熟成に必要な成分が蓄えられていくと私は考えていま す。 その後のワインの熟成期に必要なものは、ただ、静けさだけなのです。